移住戦国時代?地方創生による特典合戦への違和感。共に歩む仲間を増やすために

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■特典合戦の違和感

最近TVで移住特集があり、見ていたら「~の地域には、こんなすごい特典がある」という話題が中心。例えば「新築の家を格安で提供したり、新幹線通勤手当など金銭的な援助がすごい」など。
とても違和感を覚えました。こういうのがヒートアップして、移住者は皆得ばっかりしてると誤解されたり、損得で地域を見たりする人が増えるのもいやだなあと。

今暮らしている高知県の嶺北地方では、私達が移住してきたころ・・・ちょうど8年前にNPOれいほく田舎暮らしネットワークが設立され、UIターン者を中心に有志での移住者支援がはじまりました。

夫は、初期メンバーとして仲間達と一緒にボランティア活動をしてきました。みんな手弁当で、それでも「自分達の暮らしを豊かにするためにも、地域を一緒につくる仲間を増やしたい」と頑張ってきました。

3年前に高知県が移住に力をいれることになり、嶺北が移住先進地として選ばれ、職員を置く体制に。それにともなって夫は事務局長になり現在に至ります。

「お客様扱いされないのがよかった」という人もいるんです

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高知県の移住者へのサポート体制は細やかですが、例えば「新築の家を格安で提供したり、金銭的な援助がすごかったり」などの物質的援助は他府県に比べて決して多い訳ではありません。

嶺北には、毎年30組(子育て世帯が多い)前後の移住者が入ってきていますが、目だった特典はないし、ウリにもしていません。「ここに住んで」と押すでもなく引くでもなく、その人が自分で決断できるように見守ることを大切にしています。


移住者が何に魅かれてくるかといえば「ここで暮らす人達の暮らしぶりに魅かれて」「素敵な人がいるから」「子育て環境がよいから」など、そういう理由が多い印象。

移住者や移住希望者に「なぜここへ移住したいと思ったの?」とたずねると、
「お客様扱いされていないのがよかった。」という声もよく聞きます。

「目だった特典があるわけでもなく、何かを与えられるわけでもなく、地域を一緒につくる仲間として扱ってくれる感じがよかった」
「まるで同じ船に乗るクルーのように、見てくれているのがよかった」

これ、結構大事なことだと思うのです。

■受動的→自発的な地域の乗組員(クルー)

結局、地域に入るということは一過性のことではありません。
長年、そこに住む人達とお付き合いしたり、地域作りに参加したり、
仕事だって少ない中で一生懸命仕事をしたり、仕事を作ったり・・・ということも必要です。

私も、8年高知の山奥で暮らしてきて実感するのは、
都会のようにほとんどのことをお金で回すことが可能な社会とは違い、
田舎では自力で生きる力、人や自然、コミュニティなど様々な関係性の中で回る部分が多いこと。

暮らしにしても仕事にしても「自分でやる」という覚悟がないと暮らすのは現実的に厳しいでしょう。
特に「存続の危機さえある地域」というものを再構築しないといけない時代状況を思うと、田舎に住む人には「与えてもらうことを期待する」のではなく、「自分達でクリエイティブしていく」という意識が大事だと思うのです。

■みんなで仕組みに振り回されず、どうしたら本来の目的をかなえられるか考えよう。

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もちろん、国も行政も、移住支援団体も、移住者も、地域の人も、みんな同じように「地域がよくなること」を願っているのは同じ。その中で、制度とか仕組みというのはどうしても固くて、多様な地域に対して“あてはめ型”になりがちだったりして、本来の目的とずれることもあります。

だからこそ、それぞれの人がそれぞれの立場で、現状にフィットするように柔軟な試行錯誤をし、本来の願いをみんなでかなえていけたらいいなって思うんです。

特典があること自体が悪いとは言わないし、用意があるならば活用すればいいと思います。
活用する側は「自分でやる」という意識を持ち続けること、また、受け入れ側もお客様扱いしすぎず見守ること。そんな原点に戻る意識をもちながら、活用することが大事だと感じます。

■目標数値と、本質的な移住の目的。葛藤しながらも見失わずに・・・

「国や行政から予算をもらって移住支援をする」ということは、当然ながら成果(移住してきた人口数)が求められます。確かに、アウトプットとしてわかりやすい目標数値がないと人は流されるので大事な指標ではあります。
が、知らない間に数字ばかりに意識が行くのは危険なこと。

関東のある村では、移住者の受け入れをしつつも、江戸時代の藩のときに村にいた人口を指標にし、増やすことだけを目的にせず「そのくらいの人口なら村の中の循環経済で食べていける」そんな適正な人口でいい。という場所もあります。

移住の本質的な目的は、
「地域がよくなる」「地域が循環していく」ことにあるはずです。
「一緒に地域を作っていくにはどうしたらいいか?」
「みんなが幸せに暮らすためにはどうしたらいいか?」
それを考えながら歩んでいくことが大事。


これ、言うのは簡単です。
実際に、
地元者・移住者・行政・国のはざまでバランスをとりながらも地域をよくしていこうと頑張る移住支援というものは、本当に難しいことなんです。

だけれど本質を胸におきながら、それぞれがそれぞれの立場で仕組みに踊らされず、誰かを攻撃するでもなく、「自分自身が自発的に生き、人を生かし、仕組みを活用できる方法」を考えること。

葛藤しつつも「ともにいい地域を作ろう」と歩んでいくことが今、大事なのではないでしょうか?

NPOれいほく田舎暮らしネットワーク
移住希望の方への窓口と移住者同士、地元をつなぐネットワーク作りをしているNPO。夫が事務局長をしていますのでお気軽に。


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