なにもしない時間が、なにかを生み出す

インタビューで「いつもどんなふうに過ごしているんですか?」と、聞かれることがあった。

 

 

そんなときわたしは、ちょっと考えてから

「ほとんどぼーっとしています」と答えていた。

 

 

 

「へえ、ぼーっとしてるんですか・・・」と、

インタビュアーさんは

わかったようなわからないような顔をする。

 

 

でも、わたしはやっぱりどう考えても、

1日のうち5、6時間ぼーっとしてて、

あとの1~2時間でぱっと

何かを書いたり、アウトプットする。

 

 

そんなリズムで、じゅうぶんだったのだ。

 

 

それが、最近になってがむしゃらに働くようになり

四六時中仕事のことばかり考えるようになった。

そうすると逆に、生産性が落ちてしまうように。

 

これは、なぜだろう?

とても疑問だった。

なぜ「なにもしない時間」が創造力を高めるのか?

 

創造性には主に二つの考え方があるそうだ。

 

 

「今の目的を達成するために

目下のことに集中して得られる創造性」と

 

 

「休み時間に白昼夢を見て心をさまよわせ、

新しいアイディアを思いつく創造性」。

 

 

わたしたちは前者にばかり集中しがちだが、

じつは後者こそが創造性の秘訣なのだ。

 出典:「スタンフォードの最新成功学講義・自分を大事にする人がうまくいく」

「直線的な思考のみではなく、

心をさまよわせる時間があることが創造性につながる」

 

「ぼーっと」は、

決して無駄な時間ではなく、

たいせつなリズムなのだ。

前に無理やり進めれば、後ろに下がる

 

 

 

人は何か作業をすれば物事が前に進むと思っている。

だけどそれは、その通りじゃない。

 

 

もちろん、タスク的に片付いてゆく

ビジネス的な仕事はいっぱいあるだろう。

 

 

だけど、 何かが体の中から湧いてきたり、

インスピレーションがきたり・・

そういう創造的なものは

「こなす」ことからはやってこない。

 

 

 

 

ただただ、畑で草むしりをしている時間。

草の香りが土とまじって、

野性的になってむんと鼻につく。

 

 

たいせつな人と、ただ話をして

たゆたっている時間。

 

 

こどもと一緒に沢を登って、

水をさわる時間。

 

 

なんとなく今これ、という本を読み漁って、

ただただ味わう時間。

 

 

まちかどを歩いて、いいなこの壁・・・と思う時間。

 

 

受け止める時間、泣き笑い消化する時間。

 

 

なんにもしない、時間。

 

 

 

思考は思考でするとして、

そんな時間をいっぱい味わったあとに、何かがやってくる。

何かを表現せずにはいられないような感覚に襲われて、

何かを描くこともある。

 

 

そして、

ああ、次はこんなことを研究してみたいなあ、

もっとこれについて人にインタビューしてみよう、

そんな、わくわくするアイデアが出てくる。

 

 

思いをめぐらす時間

 

 

 

先日の編集術講座でも、村松先生が

「思いをめぐらす」ことの

たいせつさについてお話しされていた。

 

 

”よかった、面白かった、好きで終わらせない。

それくらい日々のものごとを、じゅうぶん味わってもいい。

 

 

きのう騒がれていたことが、

きれいさっぱり忘れられて、

今日は新しいものごとが騒がれる。

 

 

そんな情報過多の現代で

自分を守るために、

「ああ面白かった、で終わらせたほうが楽」

としてしまう人も多い。

 

でも、あえてそれを反芻する。

 

 

味わえると、違ってくる”

 

 

つまり、

「どこが、なにが、どんなふうに、よかったのか。

おもしろかったのか、すきだったのか」

 

 

 

思いをめぐらすこと。

編集力ってそういうことだ。

 

 

 

高い代償

 

 

 

この言葉を聞きながら

ああそうか、わたしには

一つ一つのことに、

 

「思いをめぐらせて、

味わい感じ切る時間が必要なんだ」と思った。

 

 

日々、仕事をしていると

いくつものものごとが

ものすごいスピードでやってくる。

 

 

その衝撃は、一つ一つ大きいのに、

受け止める時間もないまま

次へ次へと計画は進む。

 

 

ついていけないうちに、

いつしか心が疲弊してしまう。

 

 

頭では理解しても心が置き去りになるのだ。

そんななかで、静寂は訪れない。

 

 

繊細ななにかがつぶれるたび、

なにも産めなくなっていく。

 

・・・ 

 

創造性を産むための時間。

 

 

ひとつひとつを、取り逃さないで

たいせつに、受け止める時間。

 

 

結局これをすっとばすたびに、

高い代償がやってくる。

 

 

 

日々創造的に生きるために

働き方・・・もっと言えば

生き方をいまいちど見直したい。

 

 

今日の質問

 

 

あなたにとって、

すっとばしてはいけない時間はなんですか?