日本のアール・ブリュット界の老舗
8年前、京都の郊外で田舎暮らしをしていた時、夫は知的障がい者入所施設「みずのき寮」で働いていました。「みずのき」は、日本のアール・ブリュッド界の老舗として有名。「みずのき」は、1964年という早い段階から日本画家の西垣籌一さんに制作の指導を受けて芸術活動にとりくむように。描かれる作品は魅力を放ち、スイスのアール・ブリュット美術館に、入所者の作品がアジアで初めて収蔵されるなど高い評価を得ています。
http://www.nippon-foundation.or.jp/what/spotlight/artbrut/story5/
アール・ブリュットって何?
フランス人 ジャン・デュビュッフェがつくったフランス語「アール・ブリュット(Art Brut、「生(なま、き)の芸術」)特に、子どもや、正式な美術教育を受けずに発表する当てもないまま独自に作品を制作しつづけている者などの芸術も含む。「アール・ブリュット(生の芸術)は、芸術的訓練や芸術家として受け入れた知識に汚されていない、古典芸術や流行のパターンを借りるのでない、創造性の源泉からほとばしる真に自発的な表現」と書かれている
圧倒的な存在感
私は家も近かったので、ちょくちょく施設のイベントや、畑作業にご一緒させてもらってました^^時々ボランティアで利用者さんの外出に付き添わせてもらったり、彼らの絵が展覧会で飾られているときには一緒に見に行ったり。楽しかったな。
http://ayabe-kirinya.com/blog/archives/219
当時美大生だった私にとっては、彼らの絵をみる時に「これはアールブリュットだ」とか、「特別な絵としてのフィルターをかけてみる」ということはあまりなくて、ただただ「湧き上がるような、存在感の強さ」に惹き付けられていました。 一般的な作家さんの絵にも、存在感のあるものとないものがあり、あるものには自然と引き寄せられます。現代アートには「これはこれこれこうだから、すばらしい」という解釈付きでやっとすばらしいと判断するようなものも多い。ですが、私はやはり「存在感」はうそをつかない。美しいものというのは「一瞬で見て美しいとわかる」「そこになぜか足が止まり、たたずんでしまうもの」だと思っています。
彼らの作品の圧倒的な色彩の組み合わせ、めちゃくちゃかっこいい構図に魅せられたり、人間の中の悲哀も喜びも、美しさも怖さもまるごと感じたり。彼らを作家さんとして尊敬しながら、少しでも関わらせてもらえた時間はすごく大切なものでした。
作家さんたちとの思い出
http://whoswho.jagda.org/jp/portfolio/5450.html
思い出ぶかい山本悟さんの絵はこちら↑題材はいつもウルトラマンや仮面ライダー。表情から伝わってくるものは様々。絵の中に組み込まれている抽象画のようなときもあれば、すごい勢いでグオッと出てくるような強いときもあり・・・。私達の結婚式にも施設の職員さんと、仲良しの堀田さん(下の漫画)と一緒に来て下さり、ハーモニカの演奏やあいさつもして下さってとても嬉しかったです。
http://www.ameet.jp/feature/feature_20130703/
堀田哲明さんの絵はこちら↑家の絵ばかりを描いてらっしゃる方。私は彼の絵が大好きです。
とにかく色彩が素晴らしくて、「うわっこういう組み合わせもあるのか・・・!」って驚かされることも多々あり。いつまでも、塗り重ねられた筆跡を眺めていたいくらい、色の奥に色が見えてくる。そんな絵です。
他にも、作家さんたちとの思い出はいっぱいあって・・・
私達の家は本当に施設のすぐそばだったので、毎日散歩している山崎孝さんとは何気なふれあいが多かったなあ。チャーミングな笑顔でニコニコしながら、お寺が好きでずっと歩いてらっしゃったのを思い出します。
http://www.mizunoki-museum.org/exhibition/
2010年には「丹波国分寺跡アートスケープと亀岡アール・ブリュット」も開催され、
この家↓実は私達がかつて暮らしていた庫裏。
山崎 孝 さんにちなんで「タカシ特集 」(コーディネイト/宮下 忠也) が展示されていたんですって。2つのバルーンは孝さんの絵画イメージをデザインしたもの。
中でも展覧会。
http://grandsheep.exblog.jp/i32/
そのまわりのビニールハウスでも、こんなカフェが企画されたり、面白い展覧会だったんですね。
見知らぬものへの恐怖は、直接的な関わりで減る
人間って、自分が見知らぬものへの恐怖があると思うんです。例えば他国、LGBT、様々なマイノリティから自分とは全く違う生き方をする人まで。障がい者さんもその一つととらえられやすい。「何考えてるかわからない」「どう付き合ったらいいかわからない」から敬遠したり、「自分を脅かすもの」と思うから排除したり。でも、本当は「自分とは違う人が、そこに存在しているだけ」
少しでも関わる時間があれば、現実の彼らがどういう存在か何となく分かり、怖さは減ります。困ったところも、チャーミングなところも、想像を超える行動もすごさも幅広く持ち合わせておられ、一人一人違う。そこには発見も多い。偏見や既成概念で人を見ることが少なくなったり、人間の持つ「幅の広さ」を知れ、様々な人との付き合い方の勉強にもなりました。ご近所だったことを感謝しています。
みずのき美術館
亀岡市にできたみずのきの美術館。素晴らしい作品達がたくさん。ぜひお出かけくださいね。
http://www.nippon-foundation.or.jp/what/spotlight/artbrut/story5/
■HP→http://www.mizunoki-museum.org/
開館時間10:00 – 18:00
休館日 月曜日・火曜日
*展示替えのため、長期休館する場合があります
入館料 一般 400円 高大生 200円 中学生以下無料
住所 〒621-0861 京都府亀岡市北町 18
アクセス JR嵯峨野山陰線 亀岡駅下車 南口より徒歩8分
※美術館に駐車場はございません。公共交通機関をご利用ください。
TEL 0771-20-1888
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